「多機能性」という「専門性」が必要
共生型だからこそ求められる専門性
これまでとは違う専門性が必要
「多機能性」と「専門性」は相反する言葉のように思えますが、共生型サービスにおいては提供するサービスの多機能性が求められるがゆえ、それを効果的に機能させるための専門性が必要なのです。今までの制度では介護保険サービスと障害福祉サービスが縦割りになっており、介護人材は介護の専門家として、福祉人材は福祉の専門家として専門分化が行われてきました。それぞれが独自の専門性を持つようになり、高齢者に対しては介護、障害者に対しては生活支援、子どもに対しては保育、といった分野ごとにスキルを蓄積しています。
共生型サービスのモデルとなっている富山型デイサービスですが、この施設は年齢や障害の有無に関わらずケアを必要とする人にサービスを提供してきました。しかし当初は「高齢者、障害者、子どもが一か所に集められただけの専門性のない施設」と評価する人もいました。それまで、縦割り制度が常態化したなかで関わってきた人からすると専門性のない大雑把な運営をしているように映ったのでしょう。高齢者、障害者、子どもにはそれぞれ異なったニーズがあり、個別に対応することが正しい援助であると考える人が多かったのです。
しかし、そもそも富山型デイサービスは最初、高齢者のニーズを想定して設立されました。実際に開設してから、障害児を持つ母親からの相談や要望を受け、多様なニーズを断ることなく受け入れていき、結果として共生型サービスの基盤ができていったのです。ひとつの場所で多様なサポートを提供できるワンストップの窓口として、様々な要望を断らずに受け入れられる専門性があったからこそ運営が可能だったのです。
また、個別のサポートだけではなくお互いの関係性づくりが重要であると富山型デイサービスは考え、サービスの提供だけではなく多様な人たちが共に支え合って生活をする場所としての機能を重視した環境づくりに励みました。その環境は利用者と職員の間でつくるものであり、職員自身がそのコミュニティの一員として生活する意識を持つことが大切です。これは、あくまでサービスを提供する側であるという意識が強い縦割り制度の頃とは違う専門性を持ちます。
都度検討していく
共生型サービスを提供する際には、高齢者介護における食事・入浴・排泄などのケアと、障害福祉における障害者への個別支援、双方のスキルが必要となります。求められる知識やスキルは当然異なりますので、これまで行ってきたサービスや支援に加えて利用者ごとに異なる状況に配慮していかなければなりません。事業所ごとにサービスの範囲や内容は異なりますが、どういった内容がベストなのかを都度検討し、仕様の変更や追加をしていく必要があります。